怪我・体調 2026-10-07
ヨット部の日焼け対策|海上で落ちにくい塗り方と服装の選び方
大学からヨット部に入った部員の中には、練習や大会が続くうちに顔や首が赤くなり、ヒリヒリして夜眠りにくい、翌日の乗艇がつらいと感じた人もいるのではないでしょうか。「ヨット部 日焼け対策」で検索すると、一般的なレジャー向けの日焼け止めの選び方は見つかりますが、艇の上では手がぬれ、頻繁に塗り直しにくいというヨット部ならではの事情まで触れた情報は多くありません。この記事では、環境省・気象庁・日本化粧品工業連合会などの公開情報を土台に、陸上でできる準備と海上での工夫を分けて整理します。医療的な判断が必要な症状(水ぶくれ、強い痛み、発熱など)がある場合は、自己判断せず皮膚科などに相談してください。
結論:日焼け止めだけに頼らず、「覆う」「塗る」「塗り直す」を組み合わせて考える
日焼け対策は、帽子・衣類・サングラスなどで物理的に覆う方法と、日焼け止めで塗る方法を組み合わせるのが基本です。日本化粧品工業連合会の「紫外線防止の基本」でも、つばの広い帽子、日傘、長袖の衣類(長時間屋外にいる場合はラッシュガード)、サングラスといった化粧品以外の対策が挙げられています(日本化粧品工業連合会)。そのうえで日焼け止めは、十分な量をムラなくのばし、少なくとも2〜3時間おきを目安に状況を見て塗り直すことが推奨されています。
つまり、艇上で何度も塗り直せない前提なら、「乗艇前にしっかり塗る」「肌の露出そのものを減らす」「休憩で塗り直す」の3つをセットにして考えると、現実的な運用に落とし込みやすくなります。
海上は日焼けしやすい環境になりうる
地表面の反射で、上からだけでなく下からも紫外線が届く
紫外線には太陽から直接届く光のほか、空気中で散乱された光、地表面で反射された光があり、反射の割合は地表面の状態で変わります。気象庁の解説では、反射率の例として、芝生やアスファルトは10%以下、砂浜は25%、新雪は80%と示されています(気象庁「地表面反射と紫外線」)。なお、このページには水面そのものの反射率の数値は載っていないため、ここでは「海上の反射が日焼けにどれだけ影響するか」を数値で断定することは避けます。ただ、遮るものが少ない水の上では、陸上より長時間にわたり日差しを受ける環境になりやすいと考えられます。
小型ボートの利用者を対象にした調査の例
ヨット部員そのものを対象にした調査ではありませんが、参考になる研究があります。オーストラリア・北クイーンズランドで娯楽用ボートの利用者90人を調べた2005年の研究では、約半数が日焼けを経験していました。日焼けの危険因子としては、午前10時〜午後2時の紫外線が強い時間帯に水上で過ごす時間が長いこと、つばの広い帽子をかぶらないこと、ボートに乗る頻度が月1回未満であることなどが挙がっています。日焼けした人のうち57%は顔、43%は首のV字部分と脚に症状が出ており、研究者は熱帯地域の利用者には、日焼け止めだけでなく、つば付き帽子・襟付き長袖・長ズボンといった衣類のほうが有効だと結論づけています(Woolley, Torres, Raasch, 2005)。
ただし、この研究は熱帯域のレジャー利用者が対象で、日本の大学ヨット部とは水域も気候も練習内容も異なります。「ヨット部員も同じ結果になる」とは言えないため、あくまで「顔・首・脚が日焼けしやすい部位として挙がっている」という参考情報として読んでください。
なぜ日焼けを軽く見ないほうがよいのか
日焼けは、その場のヒリヒリ感だけの問題ではありません。日本皮膚科学会のQ&Aでは、紫外線は細胞のDNAを傷つけ、修復の誤りが長年にわたって積み重なると、がんの発生につながりうると説明されています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A)。大学4年間だけで決まる話ではありませんが、競技を始めたこの時期から対策の習慣をつくっておくことには意味があります。
また、環境省の「紫外線環境保健マニュアル」は、紫外線の性質、健康影響、防ぎ方を整理した資料で、気象庁のUVインデックス(紫外線の強さの指標)ごとの対策例もこのマニュアルで示されています(環境省 紫外線環境保健マニュアル、気象庁 UVインデックス)。合宿や大会の前に、開催地のUVインデックスを確認しておく習慣をつけると、持ち物の判断がしやすくなります。
覆う:帽子・衣類・サングラスの選び方
帽子とネックガード
ヨットでは前傾姿勢やハイクアウトで顔や首筋が空に向きやすく、つば付きの帽子や首の後ろを覆うものが役に立つ場合があります。日本化粧品工業連合会が挙げる「つばの広い帽子」を基本に、風で飛ばされにくいあご紐付きのもの、救助時の視認性、レース規則や部の方針(ウェアの指定がある場合)を確認したうえで選んでください。前述の研究でも、つばの広い帽子を使わないことが日焼けの危険因子の一つとして挙がっていました。
長袖・ラッシュガード・タイツ
長時間屋外にいる場合はラッシュガードが推奨されています(日本化粧品工業連合会)。ヨット部では、ドライスーツやウェットスーツ、セーリング用のウェアを着る場面も多く、季節によって露出する部位が変わります。夏場は腕・首・手の甲・足首のように、衣類から出やすい部位が日焼けしやすいと考えられるため、露出する部位をリストアップして、そこだけは日焼け止めで補う、という考え方が現実的です。
サングラス
サングラスも化粧品以外の紫外線対策として挙げられています。レース中は水面のぎらつきで視認性が落ちることがあり、風向きや他艇の位置を読む場面では見えやすさも重要です。ただし、レンズの種類や度付きの要否、落水時の対応(ストラップの有無)などは個人差があるため、顧問・コーチや経験者に相談して決めるとよいでしょう。
塗る:日焼け止めの量・選び方・塗り直し
量とムラ
日本化粧品工業連合会は、十分な量を肌にムラなくのばすことが重要で、量が不足したりムラがあったりすると、予想外の日焼けが起こる可能性があるとしています。ヨット部の場合、乗艇後は手がぬれて塗り直しにくいため、乗艇前の1回目で首の後ろ、耳、手の甲、膝、足の甲など塗り忘れやすい部位まで意識して塗ることが大切です。
SPFとPAの意味と選び方
SPFは主にUVB(日焼けによる赤みの原因)に対する防止効果、PAはUVA(肌の奥に作用する)に対する防止効果を示す表示で、PAは「+」の数で強さを表します(日本化粧品工業連合会)。同連合会は、海辺や雪山と通勤・買い物では紫外線の強さが異なるため、シーンに合わせた製品を選び、SPFやPAの表示を確認することを勧めています。海上で長時間過ごす日は、数値が高めのものを選ぶという考え方もできますが、数値が高ければ塗り直しが不要になるわけではありません。
「耐水性」は汗への強さを示すものではない
意外と見落としがちなのが、UV耐水性と汗の関係です。日本化粧品工業連合会のQ&Aによると、UV耐水性は水に接したり浸かったりしたときの効果の維持を示す表示で、★の数で強さを区別します。一方、汗に対しては「現在、共通の試験法や表示は国際的にもない」とされ、評価は各企業の判断に委ねられています。ウォータープルーフと書かれていても、摩擦や動作で落ちることがある点も注意が必要です。そのため、表示の有無にかかわらず、2〜3時間を目安にこまめに塗り直すことが大切だとされています。
目の周りや唇の対策
ある現役のプロセーラーは、OCEANS誌の取材で、日焼け止めは海に出るための重要な道具であり、一日に何度も塗り直し、目の周りや唇にも塗ると話しています。そのため、肌への負担が少ない製品を選んでいるとのことです(OCEANS)。これは一人のプロの事例であり、すべての部員に当てはまる方法ではありません。ただ、目にしみにくい低刺激タイプや、唇用のUVカット製品を使うかどうかは、自分の肌質に合わせて試す価値があるでしょう。新しい製品は、本番の大会ではなく練習日に試し、肌荒れの有無を確認してください。
場面別の対策チェックリスト
次の表は、公開情報から導ける基本方針を、ヨット部の場面ごとに整理したものです。個人差があるため、体調や肌質に合わせて調整してください。
| 場面 | 覆う | 塗る・塗り直す | 補足 |
|---|---|---|---|
| 練習前(陸上) | 帽子・ラッシュガード等を準備 | 十分な量をムラなく塗る。首・耳・手の甲を忘れない | 乗艇後は塗り直しにくい前提で準備する |
| 乗艇中 | つば付き帽子・ネックガード・サングラス | 難しいため、衣類で補う | 紫外線が強い時間帯の長時間乗艇に注意 |
| 休憩・昼食 | 日陰で過ごす | 2〜3時間を目安に塗り直す | 手を洗った後は特に塗り直す |
| 帰着後 | 日陰に入る | 赤みやヒリつきを感じたら、翌日の対策を見直す | 症状が強ければ皮膚科へ相談 |
| 合宿・大会期間中 | 同じウェアの使い回しで劣化していないか確認 | 毎日同じ手順を習慣化する | 前日の日焼けが残っていないか毎朝確認する |
合宿・大会期間中に気をつけたいこと
連日乗艇する合宿や大会では、前日の日焼けが残ったまま次の日を迎えます。肌が赤くなっている状態でさらに紫外線を浴びると、ヒリヒリ感が強まる場合があります。強い症状が出ているときは、無理せずコーチや上級生に伝え、その日のウェアや乗艇時間を調整するなどの対応を検討してください。練習量が増える合宿中は、食事や睡眠にも気を配ることがコンディション維持につながります。食事面はヨット部の食事・栄養管理の記事、合宿全体の流れはヨット部の合宿の内容とスケジュールの記事、乗艇前の体調管理は車酔い・船酔い対策の記事もあわせて参考にしてください。
また、開催地や水域によって気候は異なります。遠征先の水域は、ヨットマニアの水域一覧や大会カレンダーで確認できます。大学ごとの活動拠点は、たとえば早稲田大学や東京工業大学のページで調べられます。なお、大学ディレクトリは関東・近畿北陸の加盟大学のみに対応しており、その他の水域は準備中です。
部として取り組めること
日焼け対策は個人任せにしがちですが、部として仕組みにすると続けやすくなります。たとえば、艇庫や集合場所に共用の日焼け止めを置く、休憩時間に塗り直しの声かけをする、ウェアの色やつばの形など安全面と日焼け対策の両立を話し合う、といった工夫が考えられます。新入部員は、先輩の様子を見て「自分だけ塗るのは恥ずかしい」と感じることがあるかもしれません。部の習慣として定着させることで、そうした遠慮を減らせる場合があります。
まとめ
ヨット部の日焼け対策は、帽子・長袖・サングラスなどで覆うこと、十分な量の日焼け止めをムラなく塗ること、2〜3時間を目安に塗り直すことの組み合わせが基本です。耐水性の表示は汗への強さを示すものではなく、ウォータープルーフでも落ちることがあります。艇上では塗り直しにくいため、乗艇前の準備と休憩時の塗り直しをセットにして習慣化するのがおすすめです。体質や症状には個人差があるため、強い赤みや水ぶくれがあるときは皮膚科などの専門家に相談してください。
出典
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