キャリア 2026-09-23

大学ヨット部の海外遠征経験は、社会人のグローバルキャリアにどう活きる? 神戸大学オフショアセーリング部の世界大会挑戦に見る強み

大学ヨット部というと、国内の水域予選や全日本選手権を目指すイメージが強いかもしれません。しかし部の種類によっては、学生時代から海外で開催される国際大会に挑戦する機会もあります。その代表例が、大型ヨット(オフショアヨット)による学生の世界大会「Student Yachting World Cup」です。この記事では、この大会に挑戦してきた神戸大学オフショアセーリング部の実例と、企業が求める「グローバル人材」に関する調査データをもとに、大学ヨット部での海外遠征・国際大会経験が社会人になってからのキャリアにどう活きるのかを整理します。

なぜ大学ヨット部から「世界大会」に挑む部員が出てくるのか

多くの大学ヨット部は470級・スナイプ級といったディンギー(小型ヨット)で、全日本学生ヨット連盟のもとに全国9水域に分かれて国内の大会に出場しています。一方、大型のオフショアヨットを扱う一部の大学の部・サークルは、フランスで毎年開催される学生世界選手権「Student Yachting World Cup(SYWoC)」に出場する道が開かれています。1979年に始まったこの大会には、ヨーロッパの強豪国を中心に世界各国の大学チームが集まります。

神戸大学オフショアセーリング部はこの大会に複数回挑戦してきた実績を持つ部の一つです。2015年にはフランス・プリガンで開催された大会に出場して総合6位、2017年にはフランス・マルセイユ沖のフリウル島で開催された大会で、アイルランドやスコットランド、イングランド、ノルウェー、スイス、ロシアなど欧州勢を中心とした全9チームの中で優勝を果たしました。日本チームとしては初めての優勝で、7日間・16レースを戦い抜いての結果でした。2019年にはJ/24クラス全日本選手権大会で上位に入り、世界選手権大会への出場権を獲得しています。

国際大会という場で積む3つの経験

① 多国籍な混成環境でのコミュニケーション

2017年大会に出場した神戸大学チームは、海事科学部と農学部の学生に加え、東欧に留学中だった部員がフランス現地で合流するという構成でした。レース後には各国チームが自国の飲食物を持ち寄って交流するパーティも行われ、同世代の他国の学生たちと親睦を深める時間が設けられています。流暢な語学力の有無にかかわらず、初対面の他国の学生と協力・交流する経験は、国内の大会だけでは得づらいものです。

② 限られた準備期間での海外遠征ロジスティクス

国内遠征でも艇の輸送や宿泊手配は部員の役割ですが、海外遠征ではこれに加えてビザや渡航手配、現地での移動・宿泊の調整といった業務が加わります。部の代表としてこうした準備を経験した部員は、限られた情報と時間の中で海外との調整を進める段取り力を身につけることになります。

③ 異なるルール・文化のもとでの適応力

国や大会によってレースのルール運用や海況、現地チームとの関係の築き方は異なります。あらかじめ用意した想定が通用しない環境の中で、その場で状況を読み取りながら対応する経験は、海外の取引先や拠点と仕事をする場面にも通じるものです。

企業が求める「グローバル人材」像と重なる部分

日本経済団体連合会(経団連)が2015年に実施した調査「グローバル人材の育成・活用に向けて求められる取り組みに関するアンケート」では、グローバル事業で活躍する人材に求められる素質・能力として、語学力そのものよりも「海外との社会・文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する姿勢」や「既成概念にとらわれず、チャレンジ精神を持ち続ける」といった回答が多く挙げられています。

大学時代に海外の学生と共にレースを戦い、パーティで交流し、慣れない環境での遠征準備を経験してきたことは、まさにこの「異文化への関心」「柔軟な対応力」「チャレンジ精神」を実地で培ってきたことの裏付けになります。就職活動やキャリア面談でこうした経験を語る際は、「海外の大会に出た」という事実だけでなく、どんな準備をし、言葉の壁がある中で何を工夫したかという具体的なエピソードを添えると、経験の中身が伝わりやすくなります。

国際大会に出ていなくても、同じ視点は活かせる

国際大会への出場は一部の部に限られた経験ですが、国内の水域予選や全国大会も、普段は顔を合わせない他大学・他地域の部員と接する機会です。関東水域と近畿北陸水域以外の大学と対戦する全日本選手権や、遠方への遠征は、勝手の異なる環境に飛び込み、限られた時間で適応するという点では国際大会と共通する部分があります。海外に出た経験がなくても、こうした国内での「アウェーの経験」を振り返り、言語化しておくことは、キャリアを語るうえでの材料になります。

加盟大学の活動内容を知るには

自分の出身大学、あるいは興味のある大学のヨット部がどのような大会に出場し、どんな活動をしているかは、ヨットマニアの水域一覧ページから確認できます。関東・近畿北陸の2水域は加盟大学のディレクトリも掲載しており、横浜国立大学の大学ディレクトリページや工学院大学の大学ディレクトリページのように、活動拠点や使用クラスを大学ごとに確認できます。

まとめ

大学ヨット部の中には、神戸大学オフショアセーリング部のように、学生時代から海外の国際大会に挑戦する部もあります。多国籍な環境でのコミュニケーション、海外遠征のロジスティクス管理、異なるルール・文化への適応力といった経験は、経団連の調査が示す「グローバル人材」に求められる資質と重なる部分が多くあります。国際大会への出場経験がなくても、国内の遠征や大会で培った「アウェーへの適応力」を振り返ることは、社会人になってからのキャリアを考えるうえでのヒントになるはずです。

出典

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